初めて読んだ新田次郎の小説『孤高の人』で私はすっかり新田次郎が描く世界に引き込まれてしまいました。

『八甲田山死の彷徨』もやはり夢中になって読みました。新田次郎の小説の多くがそうであるように、この『八甲田山死の彷徨』も実話を基にした小説です。しかし、あくまでも小説でありノンフィクションではありません。

日露戦争の開戦がいよいよ現実味を帯びてきた明治35年、日本陸軍は日露戦争開戦に備え、万一鉄路及び道路が遮断された場合を想定し、厳寒期の八甲田山を踏破するという雪中行軍を実施する。

神田大尉率いる青森第5聯隊と徳島大尉率いる弘前第31聯隊は、それぞれ青森、弘前から出発し、八甲田山で擦れ違うという予定だった。しかし、雪中行軍の最中天候が急変、第5聯隊の神田大尉と長野軍医は雪中行軍を中止して帰営すべきと進言するが、作戦会議の結果、大隊長である山田少佐は「前進」の命令を下す。

そして、この決断の結果、青森第5聯隊210名のうち199名の死者を出すことになってしまうのだった。
一方少数精鋭で臨んだ徳島大尉率いる弘前第31聯隊は、旅程二百十余キロ、十一日間にわたる全行程を完全踏破した。

青森第5聯隊と弘前第31聯隊、この二つの聯隊の明暗は一体どこで分かれたのか?それぞれの雪中行軍の行程が交互に描かれるのを読みすすめるうち、それは徐々に明らかになります。

雪中行軍への十分な準備、雪山に対する知識、そして自然の脅威に対する恐れを知らなかった青森第5聯隊の山田少佐以下数名の隊員たちの安易な決断、指揮系統の乱れなどが重なった結果、第5聯隊に悲劇的な結末を招くことになります。一人、二人と仲間が力尽きて倒れ、食料が尽き、とうとう雪を食べる。さらには全身が氷に覆われ、やがては吹雪の中幻影を見るようになる・・・と、第5聯隊はまさに壮絶な最期を迎えるのです。

それに引き換え、弘前第31聯隊は、少数精鋭であったこともあり徳島大尉を指揮官とする指揮系統に大きな混乱はなく、完全踏破を成し遂げることに成功したのでした。



高倉健が徳島大尉を演じた映画『八甲田山』。原作はこの『八甲田山死の彷徨』。1977年製作と古い映画ですが、観たことがないので、いつか観てみたいです。高倉健以外にも神田大尉を北大路欣也 、山田少佐を三國連太郎が演じるなどかなり豪華キャストのようです。

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【追記】
その後、映画『八甲田山』観ました。原作に負けない見事な映画でした。特に雪山のシーンは圧巻。周囲の人間の意見に全く耳を貸さない、ワンマンな山田少佐役を三國連太郎が上手く演じていて、腹立たしかったです(笑)
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