じっくり読むつもりだったのに、読み始めたらあっという間に引き込まれてしまい、結局昨日、今日の2日で読み終えてしまいました。

横山秀夫の小説を読むのは、この『クライマーズ・ハイ』が初めてでした。

1985年8月、群馬県の御巣鷹山に日航のジャンボ機が墜落。主人公の悠木は地元紙、北関東新聞、「北関」の記者。悠木は、地元で起きたこの世界的大事故の全権デスクに任命される。
しかし、悠木はまさにその日、同僚で登山仲間の安西と衝立岩に登るための待ち合わせをしていたのだった。約束を守ることが出来なかった・・・そう思っていた悠木の元に安西が倒れて病院に運ばれたという情報が入る。
悠木は、未曾有の大事故の全権デスクという重圧に押し潰されそうになりながらも、同時に記者としてこの大事故を伝えるという使命に燃える。しかし、社内では上司や部下、あるいは同期とも激しく衝突する。
悠木はまた職場だけでなく、家庭でも孤独を感じていた。特に13歳の長男淳との関係はもはや修復困難なほどだった。息子との接し方が分からないのは、悠木自身父親を知らずに育ったせいなのか。また悠木は今は亡き母親の暗い過去の影に未だに怯えていた。一方、クモ膜下出血で倒れ病室で目を開けたまま意識の戻らない安西にも淳と同い年の息子燐太郎がいた。悠木は、燐太郎が自分を慕ってくるのが嬉しかった。燐太郎に淳の姿を重ねていた・・・。

主人公の悠木は、決して有能な記者でもなく、また人望が厚いわけでもありません。それに家庭でも決していい父親とは言えません。感情に流されて上司だろうと部下だろうと相手構わず怒鳴り散らしたり、息子に手を上げたり・・・少なくとも私にとっては好意を抱いたり、感情移入出来るような登場人物ではありませんでした。他の登場人物たちも同じ。特に北関の社員は、イライラさせられるような人間ばかり。

それでもページを繰る手を止められなかったのは、悠木をはじめとする北関社員それぞれの仕事に対する情熱やプライドがガツンと伝わってきたから。また、いつからか冷え切ってしまった息子淳との関係にどうしていいのか分からず、戸惑い傷つく悠木の弱さやずるさといった人間臭さが、これはフィクションではなく、ノンフィクションなのではないかと錯覚させるほどリアルさを感じさせたからです。

日航機事故の全権デスクとしての奮闘、崩壊寸前の家庭に対する悩みや怖れ、さらにかつて1年生記者を叱り飛ばし、結果としてその記者が事故にあって命を落としたことに対する後悔の念、そして安西のこと、燐太郎のこと・・・などなど様々な要素が盛り込まれているもののそれが消化不良にならず上手くまとまっているところがすごい!

どちらかというと、暗く緊迫感あるストーリーながらも、ラストシーンの清々しさには悠木、燐太郎、そして悠木と淳の関係に明るい未来を感じられる気がして、読後感は悪くないというよりむしろすっきり爽快です。これならドラマ化や映画化されるのも分かる気がします。

クライマーズ・ハイ (文春文庫)
横山 秀夫
文藝春秋
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