私は江國香織の小説では、どちらかというと恋愛小説よりも家族あるいは友情などを描いた作品の方が好きです。

この『こうばしい日々』には表題作『こうばしい日々』と『綿菓子』という2篇の中篇が収録されています。私は、特に表題作『こうばしい日々』が好きで、何度も読み返しています。

『こうばしい日々』の主人公大介は11歳。父親の転勤で、両親と大学生の姉麻由子の家族全員でアメリカで暮らしている。
大介と麻由子は歳が離れているし、麻由子は高校に通う3年間一人日本に残って暮らしていたということもあり、二人の間にはなんとなく微妙な空気が流れています。でも、決して仲が悪いというのではなく、麻由子の方が大介に対してどこか素直に優しくなれない・・・という感じなのです。
そんな大介の家族やガールフレンドのジル、クラスの友達、校長先生や食堂のおばさん、さらには大介の友人で大学生のウィルや麻由子のボーイフレンドのデイビッド、それに大介の父親の同僚の島田さんなど様々な人々との交流を通して大介の日常を描いた小説です。

事件といったら大介がガールフレンドのジルとケンカをしてしまうくらいのことで、11歳の大介の目線から見た平凡な日常が描かれているのですが、読んでいると、私自身が大介と同じくらいの年齢だった頃のことをふと懐かしく思い出す(私はアメリカに住んでいたわけではありませんが)、そんな温かい雰囲気があふれている小説なのです。読み終えた後も、なんだかほんわかと優しいし気持ちになれるので、ついつい読み返したくなるんです。

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