宮部みゆきの『ぼんくら』は、半村良の『どぶどろ』という小説へのオマージュである・・・というようなことをどこかで目にした覚えがあり、書店をぶらぶらしていた時にたまたまその『どぶどろ』が平積みになっていたので、読んでみようかなと思い、いかにも時代小説っぽい渋い表紙の文庫を手にレジに向かったのです。

この『どぶどろ』の扶桑社文庫版には、宮部みゆきさんが『平吉の“幸せ”』という『どぶどろ』への思い入れたっぷりの解説を書かれています。その解説には、『ぼんくら』の「短編が集まって長編の形になるという構造」と「ひらがなタイトル」は、『どぶどろ』にちょっとでも近づきたかったからだ、とありました。この解説がまるでエッセイのように面白いので、ちょっと得した気分になりました♪

『どぶどろ』は、先程触れたように、『いも虫』、『あまったれ』、『役たたず』、『くろうと』、『ぐず』、『おこもさん』、『おまんま』という短編の後に『どぶどろ』という長編が続くという構成になっています。それぞれの短編のストーリーや登場人物が、後の長編『どぶどろ』に関わっており、バラバラだった短編がひとつに結びついていくのです。
まさに宮部みゆきの『ぼんくら』で味わったあの感じ。最後の『どぶどろ』を読んではじめて、七作の短編がどのように最後の長編につながっていたのかが分かった時の、ひとつの謎が解けたような爽快感がありました。

最初の短編『いも虫』は、町で偶然再会した幼馴染の繁吉と新助の話。
懐かしく、互いの身の上を話す二人だったが、新助は最初に見かけた時から繁吉の様子がおかしいことに気付いていた。新助が繁吉を問い詰めると、繁吉は手代をしているお店の金に手をつけたことを白状した。盗っ人になり、岡っ引きに追われる身の新助は、江戸を離れるための逃亡資金を繁吉に渡すのだった・・・。

何だ、いかにも時代小説らしい人情話じゃないかと、ちょっと拍子抜けするかもしれませんが、この話も当然後の長編につながっていて、実は単なる人情話ではなかったことを知るのです。

その長編『どぶどろ』の主人公は平吉。生まれつきのひどい蟹股から「この字」というあだなで呼ばれていた。平吉は、町役人の岩瀬伝左衛門やその息子山東京伝に仕えていた。伝左衛門の命で、夜鷹蕎麦屋殺しの謎を追ううちに、今まで何の疑いもなく信じてきた岩瀬の家に対して疑念を抱くようになる。

ちょっと、ほろ苦い結末ですが、長編の『どぶどろ』にはミステリー要素たっぷりで、一気に読ませる面白さがあります。宮部みゆきさんが好きだというのも分かります。宮部さんの解説とあわせてたっぷり楽しめました。半村良の他の作品も読んでみたくなりました。

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