堀江敏幸の『熊の敷石』には、表題作『熊の敷石』の他、『砂売りが通る』、『城址にて』の計3編が収録されています。

3篇の中で私が最も好きなのは、表題作の『熊の敷石』です。

数年ぶりに訪れたパリで仕事をしていた主人公の「私」は、時間に余裕が出来たことで、2年ほど音信不通になっていた友人のヤンと会おうと思い立つ。ヤンの実家に電話をしてみると、どうやら今ヤンはパリにはおらず、ノルマンディーの小村で暮らしているという。
待ち合わせをしてヤンの家を訪れた私。ヤンのいちばん好きな場所だという、見晴らしのいい自然の展望台のような切り立った崖の突端に連れて行ってもらった後、レストランで食事をする。家に戻った後は、ヤンと思い出話をしたり、ヤンが写した写真について感想を述べたりとゆったりとした時間が流れていきます。
途中、私が現在取り掛かっている仕事、マクシミリアン=ポール=エミール・リトレの伝記についての紹介文と部分訳をするという仕事に関連して、リトレについての話も語られています。

『熊の敷石』は、堀江さんの作品らしく、これは小説なのか、それとも著者の体験に基づいたエッセイなのか、どちらなのだろうと思わせるような雰囲気がある作品です。

そして、また何か特別な事件や出来事が起こる訳でもなく、淡々としたストーリーなので、退屈に感じる人もいるかもしれません。でも、私にはそれが心地よいんですよね。『熊の敷石』の出だしの部分、私が迷い込んだ山の中で、足元でうごめくものを最初は毛虫の絨毯だと思っていたのですが、走って逃げ、遠くから見たら実は無数の熊の背中だったと気づくというなんとも不思議な夢のシーンからして、好きですねー。
ただ、リトレについての部分だけは、ちょっと退屈だったかな(笑)

『砂売りが通る』もしっとりとした雰囲気の作品。久しぶりに友人の妹と再会した私。友人の妹といっても歳は14も離れていて、姪っ子のような存在だったのですが、その彼女にも今は幼い娘がいる。しかし、夫とは1年前に離婚している。そんな友人の妹と、彼女の娘と私は海を訪れる。かつて、友人と友人の妹と3人で海を訪れたように・・・。そこで、私は過去に想いを馳せたりするのですが、これも私は好きです。

熊の敷石 (講談社文庫)
堀江 敏幸
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