角田光代の短編集『さがしもの』は以前発売された単行本『この本が、世界に存在することに』を改題して文庫化されたもの。

この『さがしもの』に収録されている短編に共通するテーマは、「本」。

上京して一人暮らしをするようになった“私”は、部屋にある本をひとまとめにして古本屋に売りに行く。どれも特別価値があるような本ではないはずなのだが、一冊の翻訳小説について店主に「あんたこれ売っちゃうの?」と訊かれる。怪訝に思ったものの、結局持ち込んだ全ての本を売ってしまった私は、いつの日かそんな出来事があったことすら忘れてしまう。ところが、卒業旅行で行ったネパールの古本屋でその翻訳小説を見つける。そして、本の一番最後のページに書き込んだアルファベットと花の絵からまぎれもなく自分が古本屋に売った本だと知る。再び、その本を読み古本屋に売るのだが、また次の旅先でも、その本を見つけることになる・・・という『旅する本』。

一緒に暮らしていた彼氏と別れることになり、本棚の前で自分の本と彼の本を黙々と分類する私。好きな本の趣味が似ていた彼、漫画の同じ場面で涙した彼、一冊一冊の本に彼との思い出が詰まっていることに改めて気付く『彼と私の本棚』。

いつの間にか自分の部屋にあった誰のものなのか分からない古びた翻訳小説。初めて付き合った彼が夜中にその本を読む姿になぜか不安を感じる私。やがて彼は私と別れて私の友人と付き合い始める。その後も次々と降りかかる災いをその本のせいだと考えた私は、彼と付き合っている友人に、その本を彼に渡してと頼む『不幸の種』。

入院しているおばあちゃんに他の人には内緒である本を探して欲しいと頼まれる中学生の私。しかし、どうしてもその本が見つからない『さがしもの』・・・など、全部で9つの短編が収録されています。

『旅する本』や『不幸の種』、『さがしもの』など、どこか不思議なストーリーもあれば、『彼と私の本棚』などグッと現実味のあるストーリーもあり、そのどれにも何らかのかたちで「本」が関係しているわけですが、本が好きな人なら、思わず「わかる、わかる」と頷きたくなる場面が少なくともどれかひとつの短編に一箇所くらいはあるんじゃないかなぁと思います。

でも、実は私が一番「それ、わかる」と感じたのは、角田さんの『あとがきエッセイ 交際履歴』だったりします。

個人的に好きなのは、まず『旅する本』や『だれか』の二編。旅好きな角田さんらしく、異国での旅の雰囲気がリアルに伝わってきました。あとは『彼と私の本棚』、『不幸の種』、『ミツザワ書店』、『さがしもの』・・・って、これじゃあほとんど全部ですね。

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