最近のお気に入り作家の一人、絲山秋子の『袋小路の男』。この小説も絲山秋子の作品の中では、かなり好きです。

『袋小路の男』には、大谷日向子が高校時代からずっと想いを寄せる先輩、小田切孝との12年間を描いた表題作『袋小路の男』の他、小田切孝の視点から描いた『小田切孝の言い分』、さらに前2作品とは関係のない『アーリオ オーリオ』という全部で3つの短編が収録されています。

表題作『袋小路の男』では、主人公の日向子が、高校生の時から、ずっと、ずーっと小田切孝という一人の男を想い続けるのですが、この小田切というのが、はっきり言って、そこまで想うほどの相手なんだろうか?というような男なのです!
出会った最初の時から、煙草や新聞を買いに行かされたり、名前もろくに覚えてくれなかったり、とにかく日向子は、小田切から散々な目にあっていると思うのだけれど、でも、日向子には、そういう男を好きになてしまったという悲愴感みたいなものがなくって、わりとあっけらかんとした感じすらしていて、私にはそれがよかったのです。
もし、これが、どうしようもない男を好きになって、振り回されてしまった、かわいそうな私、みたいなじめじめとしたトーンで描かれていたら、そういうのは苦手なので、最後まで読めなかったかもしれません。

大学に入学して他の男と付き合っても、就職して東京から大阪に行っても、小田切のことを忘れられずにいる日向子。でも、日向子にとって、小田切は、雲の上のような存在で、決して付き合えるなどとは考えたりしないのです。だけど、それが辛くなって、その辛さから逃れようと、他の男と付き合ってみたりするのですが、そうするとなんだかんだとどうでもいいような理由をつけて小田切から電話がかかってきたりして、結局、他の男ではやっぱりだめだと別れてしまう。

高校生の時からの12年間、とにかくそんなことの繰り返しばかりなのですが、日向子は気付いていないけれど、小田切が日向子のことを少なからず想っているというのが読んでいて分かるから、二人の未来になんとなく希望を持ちながら読み終えることが出来ました。

さらに、続く『小田切孝の言い分』を読めば、小田切は、日向子のことをどんな風に見ていて、どう思っていたのかが、はっきりとではないですが分かります。

最後に収録されている『アーリオ オーリオ』は、清掃工場に勤務する哲と、その姪で中学3年生の美由が、ある時一緒にプラネタリウムに行ったのをきっかけに、手紙のやり取りをするようになる、そんな二人の交流を描いた、しっとりとした雰囲気の作品です。実は、この『アーリオ オーリオ』もかなり好きだったりします。

袋小路の男 (講談社文庫)
絲山 秋子
講談社
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