『砂漠』を読むのは2回目なのに、何、この面白さは!という感じでした。読みながら、わくわくするというか、読書することの喜びをひしひしと感じながら読みました。

『砂漠』は5人の大学生の入学から卒業までの4年間を描いたもので、5つの章からなっています。
1年生の春に起きた出来事を描いた『春』から始まって、2年生の『夏』、3年生の『秋』、4年生の『冬』、そして卒業の『春』。

主人公の北村はどこか冷めたところがあって、上から周囲を見下ろしているかのようなところがある、鳥井いわく「鳥瞰型」の人間。鳥井は女の子が大好きで、人を茶化したり、ふざけたりするのが好きで、よくぎゃはは、と笑う陽気な男。5人の中で最もインパクトのあるキャラクターなのが、西嶋。西嶋は周囲の視線や反応なんてお構いなしに自分の言いたいことをまくしたてて、周囲をどん引きさせる。全く空気が読めない、というか読まない男。南は手を触れずに物を動かす事ができるというものすごーく特殊な能力を持っているのだけれど、大人しくて控えめで、「日向が似合う」感じの可愛らしい女の子。そして、東堂は男性の視線を独り占めしてしまうくらいとびきりの美人。でも、全くと言ってもいいくらい感情を表に出さないから、一見ひどく無愛想に見えてしまうし、変わったところがある。

こんな5人の出会いを描いたのが、最初の『春』。この章は、5人がどうやって出会って、どんな風に親しくなっていくのかが中心に描かれているので、楽しく穏やかな気持ちで読むことが出来ます。

ただ、ラストの出来事が、やがて次の『夏』に起きる事件への序章となっています。

そして、『夏』。2年生になり、ますます親しくなった5人。べったりな関係ではないけれど、全員集まれば楽しい、5人はそんな関係になっている。また、北村はブティックで出会った店員の鳩麦さんと付き合い始めています。
最初は5人で海水浴に出かける場面から始まります。なんていったって季節は夏だし、これから楽しい事ばかりかと思いきや、ここで、この小説の中で最大で最悪の事件が起きてしまいます。その事件がきっかけで、5人の中では1番陽気でおしゃべりだった鳥井がまるで別人のように変わってしまうのです。

事件の場面は1度読んでいて分かっているはずなのに、やっぱりハラハラドキドキしてしまいます。こういう“暗”な場面などの上手さはやっぱり伊坂幸太郎だなぁって思います。

私が、読みながら思わず涙が浮かんでしまった場面が、この『夏』にあります。
それは、事件後に皆で鳥井のマンションに行こうという事になり、北村が西嶋を迎えに行った場面です。そこで、北村は、西嶋の部屋に何冊かの分厚い医学書が積まれているのを見つけるのです。西嶋って、何考えているんだかよく分からないキャラクターだけど、この場面で、不器用ながらも鳥井のことを考えていたということが、伝わってきて、なんだか自然と涙が浮かんできてしまったんです。

そして、『夏』のもうひとつの名場面が鳥井を元気付けようと5人で集まって麻雀をする場面。ここでも西嶋の馬鹿らしくも、真似できないすごさが!

3年生の『秋』は、学祭でのあるイベントでの面白い一幕があります。また、鳥井と南が付き合い始め、西嶋と東堂の関係にもここに来てようやく動きがあります。
この『秋』も最初の『春』と同じように楽しく読めちゃいます。前の『夏』がちょっと重苦しかったから、ほっと一息つくという感じでしょうか。

そして、4年生の『冬』。いよいよ『夏』の事件に決着をつける時がやってきます。これまたちょっとハラハラします。ここでは、鳥井がかっこいい!です。いいところを全部持っていってしまっています。そして、この小説でのもうひとつの関心事、西嶋と東堂の関係にもようやく決着がつきます。

そうしてめでたく卒業の『春』を迎えて物語は終わります。

私は、いつもなるべく簡潔に感想を書くようにしたいと思っているのですが、今回は長くなってしまいました。でも、まだまだ私が感じた『砂漠』の魅力や面白さの半分も伝えきれていないような気がしてしまいます。最初にも書きましたが、2度目に読んでもこんなに面白くてワクワクしちゃうような本はなかなかないです。

ところで、この『砂漠』はオンライン書店によっては「完全版」という説明があったのですが、どこか加筆修正があったかなぁ?私は単行本は図書館で借りて読んだので、手元にはないから読み比べていませんが、大幅な変化というのはなかったように思います。



前に『砂漠』を読んだ時も、思ったのですが、今度こそサン=テグジュペリの『人間の土地』を読もう!と今回も思いました。(その後本当に読みました(笑)→人間の土地/サン=テグジュペリ

あと、クラッシュはCD1枚だけですけど持っているのですが、ラモーンズは1度も聴いたことないのでちょっとだけ聴いてみたいです。だって、あれだけラモーンズ、ラモーンズって言われたら、それは聴きたくなりますよ。これも、前に読んだ時にも思ったんだけど(笑)。

【追記】『砂漠』文庫化されました。

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