村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだ後、また時代小説を読みたくなったので、家の本棚を物色。藤沢周平にするか、山本周五郎にするか・・・。いや、宮部みゆきの短編集にしよう。

ということで選んだのが『幻色江戸ごよみ』。再読です。実は、宮部さんの時代小説の短篇集で一番好きなのはこの『幻色江戸ごよみ』ではなく、『初ものがたり』なのですが、その文庫が見当たらない・・・。また買いなおさないとなぁ。

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

『幻色江戸ごよみ』はそのタイトル通り、様々な季節の江戸を背景にちょっと怖い、あるいは不思議な、またはホッとするような人情話が集まった短篇集で「鬼子母火」、「紅の玉」、「春花秋燈」、「器量のぞみ」、「庄助の夜着」、「まひごのしるべ」、「だるま猫」、「小袖の手」、「首吊り御本尊」、「神無月」、「侘助の花」、「紙吹雪」という12編の短編が収録されています。

幽霊が出てくるのだけれど、怖くはなくてどこか笑えてちょっぴり切ないのが「器量のぞみ」。十八歳のお信は、大女で力持ち、それに加えてちっとも美しくない。しかし、そんなお信を「器量のぞみ」で嫁に欲しいという男が現れる。
それが下駄屋「木屋」の息子繁太郎。しかもその繁太郎は評判の美男子。からかわれているとカンカンになるお信だったが、繁太郎は本当にお信を美しいと思っているようで、結局お信は繁太郎のもとに嫁ぐ。
ところが、繁太郎だけでなくその両親と美しい二人の妹おすずとおりんまでもがお信を美しいと言う。さらにおすずとおりんは自分は醜いと嘆く始末。
何かがおかしいと感じたお信の前に現れたのは、おくめという女の幽霊だった・・・。

お信とおくめのやり取りが面白いし、おくめは全く怖くありません。おくめは木屋の人間を祟るのを止めてもいいと思っているのですが、そうすると、繁太郎をはじめとする木屋の人間には美しく見えていたお信が、そうでなくなってしまう・・・。おくめは決断をお信に託します。果たしてお信の下した決断は・・・?という感じでなかなか面白い話になっています。

逆にゾッとしたのは「だるま猫」。幼い頃から火消しになりたいと願っていた文次。ところが、いざ火消しになって火事場に行くと足がすくんで身動きが出来ない。結局、文次は一膳飯屋「ひさご屋」で住み込みで働くことに。
この「ひさご屋」のあるじ角蔵は、六十近い年配だが、まったくの独り身で愛想もなく、無口な変わり者。そんな角蔵が、ある晩、文次に自分もかつては火消しだったと打ち明ける・・・。
この「だるま猫」のラストは典型的な怪談っぽい感じですね。すごく怖いというわけではないけど、ちょっとゾッとしました。

この『幻色江戸ごよみ』にゾクゾクするような怖さを期待すると拍子抜けしてしまうかもしれません。怖い話が苦手な私でも全然平気ですから。宮部さんの時代小説らしい人情味溢れる話がほとんど。「神無月」などは年に一度神無月のころに盗みを働く盗人とそれを追う岡っ引の話で、それこそ私の好きな『初ものがたり』のような捕物帳のような雰囲気の短編。

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)幻色江戸ごよみ (新潮文庫)
宮部 みゆき

新潮社
売り上げランキング : 51957

Amazonで詳しく見る


余計に『初ものがたり』を読みたくなってしまいました。
スポンサーリンク
関連記事