これまでエッセイしか読まなかった三浦しをんの小説『風が強く吹いている』を読んで、その面白さにすっかり夢中になってしまいました。そして、なぜ今まで小説を読まなかったのか、ちょっと後悔しました。

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

この『まほろ駅前多田便利軒』は、直木賞受賞作として注目していた作品。

「あんたはきっと、来年は忙しくなる」。

多田啓介が病院に入院している曽根田のばあちゃんにそう言われる場面から物語は始まります。

心の中では曽根田のばあちゃんと呼んでいるのに、なぜかその曽根田のばあちゃんに対し「母さん」と呼びかける多田。実は、多田の仕事は便利屋で曽根田のばあさんの息子の依頼で、息子の代わりにお見舞いに来ているのだった。

様々な依頼を引き受ける便利屋の多田便利軒は、東京のはずれのまほろ市の駅前にある。ある冬の夜、仕事を終えた多田が帰ろうとすると、依頼人に預かったチワワの姿が見当たらない。慌ててチワワの姿を捜す多田は、バス停のベンチに座っている男がチワワを抱いているのに気付く。

その男は、多田の高校時代の同級生、行天春彦だった。同級生と言っても、多田は行天と会話をかわしたことはなかった。というよりも、高校時代の行天は誰ともしゃべらず、周囲に変人だと思われていたのだ。

寒空の下、行くあてのない様子の行天は、多田の事務所兼自宅に転がり込み、そのまま居ついてしまう。

なにやら訳ありな感じの行天。多田には困った人を放っておけないお人好しなところがある一方、行天は他人はもちろん自分自身にすら関心がなく、何を考えているのか分からない、掴み所のない男。

一緒に暮らすうちに行天の過去が少しずつ明らかになっていきます。そして、多田の過去も。

変わった依頼人の変わった依頼しか舞い込んでこない多田便利軒。そんな依頼人たちと多田&行天とのやり取りが、面白い。

そのオタクぶりが笑えるしをんさんのエッセイからはちょっと想像できない作品でした。どこかハードボイルドな雰囲気が漂うところが私好みで良かった。

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三浦 しをん

文藝春秋
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『まほろ駅前多田便利軒』は映画化されました。

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多田役に瑛太、行天役に松田龍平。その他、大森南朋、高良健吾なども出演。
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