2004年にWEB本の雑誌の読書相談室でした質問に回答してもらえた事がきっかけとなり堀江敏幸の『いつか王子駅で』を読みました。今では堀江さんは好きな作家の一人になりましたし、あの時回答して下さった北上次郎さんには大感謝しています。

ちなみに私がした質問は「何かしら競馬に関する場面が出てくる面白い小説(エッセイ、ノンフィクションではなく)は何かありますでしょうか?」(全文だと長くなるので前後は省略)というもので、それに対する北上さんの回答に高村薫の『レディ・ジョーカー』と堀江敏幸の『いつか王子駅で』の2作品があったのです。特に『いつか王子駅で』の紹介に興味をそそられた私はすぐに読みたくなり急いで本を買いました。

文庫化された今では単行本と文庫本の2冊の『いつか王子駅で』が私の手元にあります。下↓の文庫の表紙デザイン、いいですよね。

実際には競馬に関する場面は一部分でしかないのですが、堀江敏幸の文章にかかるととても印象的な場面になってしまうのです。それにテンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスなどかつての名馬の名前が出てくるだけでついワクワクしてしまいます。私はリアルタイムで知っている訳ではないのだけれど、競馬好きならTTGの事は当然知っていますから。

かなりのハンデを背負ってなお稀代の先行馬に前をいかせないテンポイントの膂力と瞬発力、そして首を低く下げ、みずからが切り裂く風に雪を吹き飛ばしてスタンド前の直線を疾走するフォームは、どんなに意地悪な見方をしても完璧というほかなかった。


こういう短い一文だけでもテンポイントの姿が目に浮かぶようで思わずグッときてしまいます。

またラストシーンでは主人公が勉強を教えてあげている中学生の咲ちゃんが競技場で二百メートルを走る姿をテスコガビーに重ねるのですが、そのシーンも私には素敵で印象深いものです。

短い小説なので読むのにそんなに時間はかかりませんから、私は自分の好きなこれらのシーンをもう一度味わいたい為に度々読み返しています。

『いつか王子駅で』の明るいカラーではなく落ち着いたモノクロな雰囲気がすっかり気に入ってしまい堀江敏幸の他の作品も読むようになりました。

高村薫の『レディ・ジョーカー』は文庫化されたら読もうと思っていたのですが、なかなか文庫化されませんね。

いつか王子駅で (新潮文庫)
堀江 敏幸
新潮社
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