シリーズ最新作『鷺と雪』が直木賞受賞したのを機に、未読だった北村薫のベッキーさんシリーズ第一作『街の灯』を読んでみることにしました。私自身、北村さんの小説を読むのは久しぶりでした。

街の灯 (文春文庫)

この『街の灯』には、「虚栄の市」、「銀座八丁」、そして表題作「街の灯」の三篇が収録されています。

時は昭和7年、主人公の花村英子の父は、日本でも五本の指に折られる財閥の系列の、商事会社の社長。つまり、英子は何不自由ない暮らしを送っているバリバリのお嬢様。
そんな花村家の新たな運転手としてやってきたのは、当時としては珍しい女性運転手。名前は、別宮みつ子。別宮(べっく)という姓の響きに、英子は反射的にその時読んでいたサッカレの小説『虚栄の市』の主人公、ベッキーを思い浮かべる。そして、別宮のことを「ベッキーさん」と呼ぶことにする。

このベッキーさん、はっきりとした目鼻立ちで、女性ながらに腕が立つ。そして、何より、英子が疑問に思う事に対しさりげなくヒントを与えるような意見を述べてくれる・・・。

最終的に謎を解くのは英子でも、英子を導いているのはベッキーさんと言う関係になっているのです。

『街の灯』は、シリーズ第一作ですから英子はまだベッキーさんが解決に導いてくれていることにハッキリとは気付いていません。ただ、事件や謎にぶつかると、自分の考えや疑問をベッキーさんに打ち明け、ベッキーさんはそれに相槌を打ちながらも、何気なくヒントとなるような事を英子に言ってくれるのです。

「虚栄の市」では、実際に英子の周りで起きた事件ではなく新聞に載っていた≪奇怪、自らを埋葬せる男≫という事件、「銀座八丁」では英子の兄が友人から出された暗号、そして「街の灯」では英子の目の前で起きた、ある女性の死について、英子がその謎を解いていきます。もちろん、ベッキーさんのヒントをもらって。

“円紫さんと私”シリーズを彷彿とさせる作品でした。なんと言うか、北村さんっぽいなぁという感じ。殺人事件が起きても、ただドロドロとしているのではなく、どこかほんわかとした温かみが感じられました。

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北村 薫

文藝春秋
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この一作ですっかりベッキーさんシリーズにハマってしまいました!英子の父は知っているみたいですが、謎の多いベッキーさんの正体が気になります。

玻璃の天 (文春文庫) 鷺と雪 (文春文庫)

第二作『玻璃の天』、直木賞受賞作の第三作『鷺と雪』を読むのが楽しみ。
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