読み終えるまで時間が掛かってしまったのは、つまらないからじゃなく、一気に読んでしまうのがもったいなかったから。堀江さんの本を読む時は、いつもこういう気持ちになってしまいます。

もののはずみ (角川文庫)

この『もののはずみ』は、堀江さんと「もの」との出会いが描かれています。堀江さんが惹かれるのは、新しいものよりもむしろ「ほんのちょっとむかしの」もの。

例えば、それは珈琲挽だったり、陶製のペンギンだったり、「おまけ」でもらった黒い本を小脇に抱えた読書家の熊のぬいぐるみだったり・・・。

ひとつの「もの」についてのエッセイは大体4ページで、そのうち1ページはその「もの」を撮ったと思われるモノクロ写真。これらの「もの」との出会いの場が主にフランスの古物市や古道具屋だからなのか、それとも堀江さんのセンスの良さなのか、写真で見るそれらの「もの」はどれもよく使い込まれて味わい深く、おしゃれ。無駄がないけど、温かみのある感じが何だか堀江さんの文章に似ているような気がします。

どのエッセイもいいのですが、特に印象に残ったのは『空気が一変した』というエッセイ。「もの」の組み合わせについて語られた後、堀江さんが古物市の一角で地球儀の横にある薄汚いダックスフント(ぬいぐるみ)を見ていた時の話に。店のおじさんは、ちらりと堀江さんに目をやって、犬か、地球儀か、と訊き、堀江さんが犬です、と応えると、おじさんは何も言わずに立ちあがり、奥の箱からべつの犬を出してきて、そっと横に並べた。すると・・・

空気が一変した。彼らはまるで、幼稚園の頃からの友だちみたいにたたずんでいた。


このエッセイに添えられた写真の2匹の犬のぬいぐるみが、本当に幼稚園の頃からの友だちみたいで、思わずじーっと見入っていまうほどでした。

文庫の解説は片岡義男さん。

角川文庫から堀江さんの本が出るの初めてですね。このシンプルな表紙が堀江さんっぽい感じでいいですね。

もののはずみ (角川文庫)もののはずみ (角川文庫)
堀江 敏幸

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