佐藤正午の『Y』が届いてから、中断していた村上春樹の『ノルウェイの森』の再読。世間は『1Q84』ブームの中、数年ぶりに『ノルウェイの森』を読み返してビックリ。それは、私の記憶の中にある『ノルウェイの森』とは随分違う印象を受けたからです。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫) ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

これほどまでに性的な描写が多かったかな?確かこの本を初めて読んだのは大学生の時で、その後も少なくとも一度は再読したはずなのですが、細かい内容はすっかり忘れてしまっていて、自分が良かったなと思う部分しか覚えていなかったようです。まあ、それは他の本についても同じなのですが、それにしても・・・。

私にとって初めて読んだ村上作品がこの『ノルウェイの森』だったのですが、よくすんなり受け入れて次の村上作品を読もうという気持ちになれたなぁと、今回の再読ではそう思いました。もしかして、『ノルウェイの森』から村上作品を読み始めて、そのまま村上春樹を苦手になっちゃった人って結構多いのでは?

主人公のワタナベには、高校時代、唯一友人と呼べる存在キズキがいた。ワタナベとキズキ、さらにキズキの幼馴染であり恋人でもある直子の三人は、一緒にいて気楽な関係だった。ところが、ある日突然キズキが自らの命を絶ってしまう。

やがて大学生になったワタナベは偶然直子と再会し、何度か会うようになる。そのまま二人の関係は上手くいくかと思ったところ、直子はワタナベの前から姿を消してしまう。しばらくして、直子は精神的な問題を抱えていて、京都の山の中にある療養所にいることが分かる。

そんな中、ワタナベの前に同じ大学に通う緑という女の子が現れる。緑はちょっと変わった女の子でワタナベはそんな彼女に振り回されるのだが、次第に大切な存在になっていく。療養所にいる直子に何度か会いに行き、何通も手紙を送り続けたワタナベは、直子が回復していると考え、二人で新しい生活を始めたいと提案するのだが・・・。

『ノルウェイの森』に緑が登場しなかったら、私は最後まで読めなかったかもなぁ。どの登場人物も変わっていますが、緑もかなり変わった女の子です。なぜかいつもエッチな話をするし、いやらしい映画(しかも、ばりばりのいやらしいSM)を観るのが好きだし、酔うと木のぼりしたいと言い出すし・・・。
でも、下巻の後半あたりで、ベンチのとなりに座っているワタナベに対して、髪型が変わったことに気付いてくれなかったと怒りの手紙を書くところや、デパートの屋上での緑とワタナベのやりとりに関しては普通の女の子っぽさが感じられて、かわいいと思ったし、お気に入りの場面です。

すっかり村上春樹ファンになってからの再読なので、村上作品のお約束とも言える音楽や小説のタイトルが登場する部分を見つけて楽しむという読み方も出来ました。

この小説の最初に登場する音楽はもちろん、「ノルウェイの森」。

飛行機が着地を完了すると禁煙のサインが消え、天井のスピーカーから小さな音でBGMが流れはじめた。それはどこかのオーケストラが甘く演奏するビートルズの「ノルウェイの森」だった。


それから、ワタナベが直子に宛てて書いた手紙の中に出てきたレコードのタイトルを見て、思わずそれをiPodで聴きながら続きを読んでしまいました。

机の前に座って『カインド・オブ・ブルー』をオートリピートで何度も聴きながら雨の中庭の風景をぼんやりと眺めているくらいしかやることがないのです。


大学生の時はまるで興味がなかったジャズですが、今は村上春樹や金城一紀などの小説にぽつぽつと出てくるジャズの曲名やCDのタイトル、アーティストに興味を持つようになって、少しずつCDを買って読書しながら聴いたりしています。マイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』もその中の一枚。ジャズのCDの輸入盤はお手頃価格なので気軽に買えるのがいいです♪

ワタナベが読む小説のタイトルや作家の名前も色々と登場します。

十八歳の年の僕にとって最高の書物はジョン・アップダイクの「ケンタウロス」だったが何度か読みかえすうちにそれは少しずつ最初の輝きを失って、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビイ」にベスト・ワンの地位をゆずりわたすことになった。そして「グレート・ギャツビィ」はその後ずっと僕にとっては最高の小説でありつづけた。


ワタナベが大絶賛している『グレート・ギャツビィ』。未だに読んだ事ありません。村上春樹翻訳ライブラリーで『グレート・ギャツビー』も出ているし、『ノルウェイの森』を読んだら、村上春樹訳の『グレート・ギャッツビー』読みたくなりました。

ワタナベをはじめとする登場人物がやけに「いささか」という言葉を口にするのがちょっと気になりましたが、でも、そういうのは他の村上作品で免疫がついているので私は大丈夫でした。

「山が崩れて海が干上がるくらい可愛い」とか、「春の熊くらい好きだよ」とか、「世界中の森の木が全部倒れるくらい素晴らしいよ」とか、「世界中のジャングルの虎がみんな溶けてバターになってしまうくらい好きだ」というようなセリフも結構好きだったりします。実際に言われてみたいかと言われたらそうではないですけど。

一年に一度は読みかえしたくなるというほどではないですが、また何年後かに読みかえしてみようかな。

『ノルウェイの森』もついに映画化ですね。ワタナベには松山ケンイチ、直子には菊地凛子、緑にはモデルの水原希子さんという方がキャスティングされているようですね。でも、この作品を映画化するのは難しそう。

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私の手元にある文庫のカバーは上・下巻とも白い表紙なのですが、今は単行本と同じように上は赤、下は緑のクリスマスカラーなのですね。


ノルウェイの森 [DVD]

映画『ノルウェイの森』、DVD化されましたが、まだ観ていません。何だか観るのがこわいような気がして。
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