佐藤正午の『Y』、面白かったです。ますます他の作品も読んでみたくなりました。という事で、カテゴリに[佐藤正午]を追加しました。

Y (ハルキ文庫)

主人公の秋間文夫は出版社に勤務する会社員。妻は高校生の娘を連れて家を出て行ってしまった。そんな秋間の元に「親友」だったという北川健と名乗る男から電話が掛かってくるのだが、秋間にはその高校の同級生だったという北川についての記憶がまるでなく、顔すら思い出せなかった。しかし、北川はどうしても秋間に読んでほしいものがあると言う。

数日後、北川の代理人の女性から手渡されたのは、一枚のフロッピーディスクと500万円の現金、それにある女性の名義になっている預金通帳と印鑑だった。訳も分からず、フロッピーディスクに保存された北川の物語を読み進めた秋間は、最初は小説の売り込みかなにかだと思っていたのだが・・・。

北川は18年前に電車の転覆事故に巻き込まれた女性のことを、結婚してからもずっと思っていて、とうとうその事故が起きた18年前にタイムスリップすることが出来る訳ですが、もちろん、それで女性を助けてめでたしめでたしというハリウッド映画のような単純明快なストーリーではありません。もし、そうだったら、私ならガッカリしてしまいます。

この設定は、作品の中でも触れられていますが、タイムスリップ、タイムトラベル小説の代表的な作品でもあるケン・グリムウッドの『リプレイ』が基になっています。ちなみに私は『リプレイ』を読んだ事はあるのですが、そんなに面白いとは思えませんでした・・・。

とにかく、北川はタイムスリップするのです。18年前、自分のちょっとしたミスで好意を抱いていた女性が再び大事故に巻き込まれてしまうのを防ぐために。そうなると、当然北川とその周囲の人の未来、つまり秋間が北川から電話をもらった現在である1998年は、元の、北川がタイムスリップする前の現在とは違ったものになります。特に人間関係の変化が・・・。

それに、ハッピーエンドではなく、ちょっぴりブラックな感じで締めくくられているのがかえって良かったと思います。あー、人間ってそんなものなんだろうなって納得しました。あまりネタバレしちゃうと楽しみ半減なので、詳しくは書きません。やー、でも面白かったです。

ただ、文庫の帯にある「時間を超える究極の恋愛長篇」とか、「渾身のラヴ・ストーリー」とかいう表現はどうなんでしょう?少なくとも私には究極のラブストーリーとは思えませんでしたけど。

Y (ハルキ文庫)Y (ハルキ文庫)
佐藤 正午

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