金城一紀のゾンビーズシリーズの中で私が一番好きな作品『フライ,ダディ,フライ』がようやく文庫化され、喜び勇んで購入、早速再読・・・そして涙。

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

断っておきますが『フライ,ダディ,フライ』は、他のゾンビーズシリーズ同様、愉快痛快なエンターテイメント性の高い作品です。でも、どうも私の涙腺がゆるいのか、涙がじわりと込み上げてきてしまうシーンが2、3ありました。再読なのに。

『フライ,ダディ,フライ』の主役は四十七歳のサラリーマン、鈴木一。容姿がいいのかと言えば、そうでもなく中肉中背。では、バリバリ仕事をこなすエリートサラリーマンかと言えば、それもそうではなく、某大手家電メーカーの子会社勤務で現在の役職は経理部部長。学歴から鈴木本人もこれ以上の昇進はないと考えている。

そんな鈴木が唯一誇れるのは自分の家族、妻の夕子と一人娘の遥。鈴木は自分のことを「家族を守るためなら生命の危険も厭わない四十七歳のサラリーマン」だと信じていたのだが・・・。

ある日、高校生の娘、遥がある男子高校生に顔や腹を殴られ怪我をして入院することに。愛する娘を傷つけられた鈴木は当然怒りに震えるのだが、急いで駆けつけた病室では傷ついた娘が自分に対して伸ばした手を握ってやることも出来ずただ呆然と立ち尽くすだけ。おまけに相手の男子高校生石原が通う高校の教頭と教師、そして石原自身の横柄な態度に対しても何もすることが出来なかった。

遥には会いたくないと拒絶され、「家族を守るためなら生命の危険も厭わない四十七歳のサラリーマン」だったはずの自分の現実の姿に鈴木は深く落ち込んでいく。

思いつめた鈴木は鞄に包丁を隠し持ち、石原の通う高校に乗り込んで行くのだが、鈴木が乗り込んだのは石原が通う名門校の近くにある別の高校・・・おなじみゾンビーズのメンバー達が通うおちこぼれ校だった。そこで南方をはじめとするゾンビーズの面々と出会った鈴木は、南方らの提案によりゾンビーズ一の喧嘩の達人、朴舜臣にトレーニングを受け、ボクシングのインターハイチャンピオンでもある石原に復讐をすることになる・・・。

というようなストーリー。たるんだ中年体型だった鈴木が舜臣の厳しいトレーニングのおかげで徐々に肉体を鍛えられていくところなんかは何だか昔のジャッキー・チェンのカンフー映画のようでわくわくしてしまいます。私はジャッキー・チェンのカンフー映画(特に初期の作品)が好きなので、こういうストーリーはたまりません。でも、鈴木が最初のトレーニングの後に慌てて購入したのはブルース・リーの『燃えよドラゴン』のDVDですけど。
今回はゾンビーズのメンバーの中でも朴舜臣がメインになっていますが、南方、山下、アギーなどいつものメンバーもちょくちょく登場して、笑わせてくれます。特に山下(笑)

また、先ほどチラッとあげた『燃えよドラゴン』をはじめ、金城作品らしく映画のタイトルやジャズの曲名なんかも登場するのが楽しかったりします。それから初めて読んだ時も、舜臣の真似をしてアガサ・クリスティ作品を読破しようと思ったのですが、未だ実現していません。でも、再読したらまたクリスティ作品読もうかなって思いました。

難しいことを考える必要はなく、純粋に楽しめ、読後感もスカッと爽快なので本当に何度も読みたくなる小説です。文庫化されて良かった。これからは手元にあるので好きな時に何度も再読出来るのが嬉しい。『フライ,ダディ,フライ』に限らずゾンビーズシリーズの作品を読むと元気をもらえます。

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金城 一紀

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