これまでエッセイは読んでいたものの小説は読んだ事のなかった佐藤正午。この前『放蕩記』を読んで(感想はコチラ)、すごく好き!・・・というわけではないけどじわじわと良かったので、今度は『彼女について知ることのすべて』を読んでみました。

彼女について知ることのすべて (光文社文庫)

「その夜わたしは人を殺しに車を走らせていた。」といういきなり驚きの一文から物語は始まります。しかし、読者にはすぐに事件は“わたし抜き”で起こってしまったことが分かり、そこから事件に至るまでの主人公の長い長い回想シーンへ。

主人公は小学校の教諭鵜川勉。同僚の笠松三千代と付き合っており、互いに結婚を意識していた。しかし、三千代のクラスの児童、時田直美がいつものように一人で父親に会いにバスで出掛けたのを迎えに鵜川が駅前のターミナルビルに行った時に三千代の中学の後輩で看護婦をしている遠沢めいと出会ったことから鵜川の運命はガラリと変わってしまう。

過去の回想から現在に戻り、また過去へ・・・といったようにこの小説は過去と現在が交互に描かれています。“事件”から八年経った現在、小学生だった時田尚美が大学生になっており、鵜川の家に同居している。鵜川の家にはもう一人かつて離島の小学校に勤務していた時の教え子で今は高校生の里子が下宿しています。その里子が同級生を勝手に部屋に泊め、鵜川の注意を聞こうともしないのが今の鵜川の悩みの種。
しかし、そんな鵜川の元に一本の電話が掛かってきたことで、鵜川の心は再び八年前に引き戻されます。

『放蕩記』の主人公ほどでないにしても、この小説の主人公、鵜川もダメ男的な雰囲気が漂っています。でも、ある意味とてもリアルな男性像かもしれませんね。めいの昔の男でヤクザのような真山が登場した時もカッコよくめいを守る・・・というわけではないのが情けないけど現実味があるし。正直言って鵜川にはあまり魅力を感じませんでした。

でも、私はこの『彼女について知ることのすべて』、好きです。過去と現在がわりと細切れに入れ替わることでダラッとしそうなストーリーにメリハリが効いていて、事件の結末は冒頭で既にある程度分かっているのですが、それでも先が気になって一気に読んでしまいました。ちょっとハードボイルドっぽい雰囲気があるのも私好みでした。他の佐藤正午の小説も読んでみたいと思うようになりました。

鵜川の父親が競輪選手という設定は佐藤正午ならではですね。『放蕩記』でもちょっと競輪の話が出てくるし。エッセイ『side B』も読みましたが、これは競輪エッセイですし。

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佐藤 正午

光文社
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