野田知佑の本を読むようになったきっかけは、その名前を椎名誠のエッセイでたびたび目にしていたから。それに動物好きの私としてはカヌー犬として知られる野田さんの相棒ガクの存在も気になっていました。

ユーコン漂流 (文春文庫)

野田さんの著書はいろいろ読みましたが、私が一番好きなのは『ユーコン漂流』です。
この『ユーコン漂流』は文字通りカナダとアラスカを流れるユーコン川をカヌーで下る旅についてのエッセイで、野田さん自身がこの旅を心から楽しんでいるのが感じられるところが好きなのです。

カヌーにテントや寝袋、本などを積み込んでユーコンを下る。1年目の夏は野田さん一人でカナダのホワイトホースから1500km地点までを旅して、一度日本に帰国。2年目の夏はガクと共に1年前に旅を中断した地点から再び出発、ヌラトという村まで行った時点でガクを預けて野田さん一人で帰国(ガクはその後2ヵ月ヌラトにホームステイ)。3年目の夏も再びガクと共に最終地点エモナックまで行き、長いユーコンの旅は終わります。

この旅での野田さんとガクとの関係が分かって、思わず笑ってしまった箇所を引用。

この地上に二人きりで暮していると、犬とぼくの関係が次第に「対等」になっていく。ぼくはガクの顔を見ただけで彼の気持ちが判るようになった。ガクの方も同じだったろう。一日にビスケット三枚では腹が減る。で、ぼくがもう一枚、余計に食べようとするとガクがじっと見る。すると、気がとがめて、食べることができなくなるのだった。


また、野田さんは旅の間にたくさんの本を読んでいます。雨が降ればテントの中で一日中本を読み、川の流れの緩やかなところではカヌーの中でも本を読んだりしています。藤沢周平、山本周五郎、開高健、ディック・フランシス、ギャビン・ライアルなどなど。旅の途中で知り合った人に本をあげたり、もらったり。ちょっとした記述だけど本好きには、そこが楽しかったりします。

ぼくはテントの内外の温度差にニンマリしてジッパーを閉め、荒野を追い出し、横になって本を開いた。
テントの外の冷たい風の音を聞きつつ、ぬくぬくとしたシュラフの中で本を読むのは大いなる快楽だ。


大岡昇平の『野火』を読む。アラスカの荒野でこんな本を読むと、日本語が体の中に沁みわたるようだ。


旅の途中にはさまざまな出会いがあります。野田さんの人柄なのか出会った人とはすぐに打ち解けて酒を飲んだり食事をしたりしています。もちろん楽しく愉快なことばかりではありません。冷たい雨が降り続けて凍えそうになったり、蚊の大群に襲われたり、さらにはガクがクマとケンカをして、野田さんのいる場所までクマを連れてきてしまい、銃で威嚇して追い払うなどかなり危険な場面もあったりします。

夫とキャンプに行っても夜はトイレに付いて来てもらうような私には到底真似出来そうにない旅なのですが、だからこそ、こうやって野田さんの本を読んで、せめて自分も大自然を旅した気分に浸っているのです。

『ユーコン漂流』は絶版っぽいですね・・・。

ユーコン漂流 (文春文庫)ユーコン漂流 (文春文庫)
野田 知佑

文藝春秋
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