村上春樹の短編集『レキシントンの幽霊』。久しぶりに再読。それで思い出したように、この短編集結構好きだなーなんて思ったりしました。

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

この短編集には表題作『レキシントンの幽霊』の他、『緑色の獣』、『沈黙』、『氷男』、『トニー滝谷』、『七番目の男』、『めくらやなぎと、眠る女』の七つの短篇が収録されています。

収録されている短篇のどれも好きです。あ、でも『緑色の獣』はちょっと苦手かも。ちなみに『緑色の獣』は、タイトル通り庭の椎の木の根元から緑色の獣(きらきら光る緑色の鱗に覆われて、先端は鞭のように細く尖っている奇妙に長い鼻で、でも目だけは普通の人間の目をしている)が這い出て来るという話。

特に好きな短篇を選ぶとすると表題作の『レキシントンの幽霊』と『氷男』、映画化された『トニー滝谷』。

『レキシントンの幽霊』は、主人公の僕が友人ケイシーが留守にする間、ケイシーが暮らす古い屋敷で留守番をするのですが、夜中にふと目を覚ました僕は誰もいないはずの階下で物音がするのに気付く。最初は泥棒かと思うのだが、音楽と大勢の人の話し声や笑い声が聞こえてきて、まるでパーティーをしているかのようで・・・という話。

僕はあっさりとこれは幽霊だと納得してしまい(このあたりが村上春樹っぽい)、ケイシーが戻って来てからも特にこの出来事については何も話さないまま。特に幽霊の正体を突き止めるでもなく、そのまま話は進み、静かに終わります。どこが好きかって聞かれたら、答えに困ってしまいますが、こういうふわふわした雰囲気が好きなのです。

『氷男』はちょっと怖い、というか孤独な気持ちになってしまう話なのですが、でも好き。

主人公の私はスキー場で出会った「氷男」と結婚します。氷男は指に決して溶けることのない白い霜が浮いていたりするのだが、外見は普通の人間と変わらない。周囲の反対を押し切って氷男と結婚した私には一緒にどこかに出かける友人もいろいろなことを話す相手もいなかった。

結婚後しばらく経って貯金も出来たので、私は氷男に旅行に行きたいと切り出す。旅行に行くことに乗り気でない氷男だったが、私が南極に行きたいと口にした途端、氷男の中で何か変化が起きてしまい、私はそれに怯えるのだが、結局南極に行くことになる。南極に着いた氷男は南極語で地元の人と話しをし、精力的に動き回っていた、一方、私はそれまで以上に孤独を感じるようになってしまう・・・。

これは、最後の結末がある意味ホラーだと思いました。

『トニー滝谷』は、誰かを深く愛するということのなかった滝谷トニーという男性が、ある時一人の女性を深く愛して結婚するのですが、妻となった彼女は洋服を見たら買わずにはおられず、どんどん洋服や靴が増え続けてしまう。トニー滝谷はそのことについて彼女にやんわりと注意をし、彼女もそれを改めようと努力しはじめた矢先に・・・。

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これも『氷男』で感じた、孤独や淋しさを感じる話でした。ちなみに映画では、トニー滝谷をイッセー尾形、妻を宮沢りえが演じています。私は映画は観ていないのですが、このキャスティングは何となくイメージ通りな気がします。

最後に収録されている『めくらやなぎと、眠る女』はオリジナルの『めくらやなぎと眠る女』に手を入れてを短く縮めたものだという説明がイントロダクションとして書いてありました。新潮文庫の『螢・納屋を焼く・その他の短編』には『めくらやなぎと眠る女』が収録されています。

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