保坂和志の『プレーンソング』は、もう何度も読み返しているお気に入りの小説です。初めて読んだ保坂和志の小説がこの『プレーンソング』で、すぐに続編にあたる『草の上の朝食』も読みました。それで、その他の作品はどうかというと、『カンバセイション・ピース』や『季節の記憶』も読むには読んだのですが、こちらはあまりピンときませんでした・・・。

そもそも『プレーンソング』を読もうと思ったのは、文庫の背表紙にもあるあらすじの中の一文。

猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。


特にこの「猫と競馬と」というところ。どちらも私の好きなもの。これは読まなければ!と思いました。

主人公の「ぼく」は、付き合っている女の子と一緒に住もうと思って2LDKの部屋を借りるのだけど、引っ越す前にふられてしまう。引っ越してしばらく経ったある日、ぼくがアルミサッシの引き戸を開けて掃除機をかけていると、サッシのところから茶トラの子猫が部屋の中を覗いていた。ぼくが近寄ろうとすると子猫は姿を消してしまう。何度かそれを繰り返すうちに、それまで特に猫に興味のなかったぼくが、茶トラの子猫のことが妙に気になって煮干を置いてみたり、カツオぶしのパックを持ち歩いたりするようになる・・・。

そんなぼくの部屋にアキラとよう子、島田の三人がやって来てしばらく一緒に住むことになるのですが、ぼくと島田は一応会社勤めをしているもののアキラとよう子は特に何もしておらず、そのうちよう子はぼくに代わって茶トラの子猫を探すようになり、アキラはそんなよう子に付いていって、よう子の写真を撮ったりして一日を過ごすという何とものほほんとした生活を送っています。
じゃあ、ぼくと島田はアクセク働いているのかというと、どうもそうではなく、一体どんな会社に勤めているのかぼくは昼前に出勤して、夕方早く帰宅するという感じ。島田は一応真面目に働いているのですが、小説を書くために会社を辞めようとします。

その他の登場人物にはぼくが猫のことを電話で報告する大学時代の友人、ゆみ子や、大学時代の先輩で競馬仲間の石上さんと、同じく競馬の話しかしない同じ会社の三谷さん、さらに四人が海に行く時の運転手としてアキラが連れてきたゴンタなど。

ぼくも十分変わっていると思うのですが、それ以上にアキラやよう子、島田、三谷さんなどはかなり個性的なキャラクター。アキラなんて、もし自分の周りにいたらイライラさせられそう(笑)

猫と競馬の話がかなりの割合を占めています。これは私には読んでいて楽しく、好きな部分なのですが、そうでない人にはどうなのでしょうね。特に競馬のことなどかなり細かい部分まで書いてあるので、興味のない人にとってはとことん退屈に感じられるかもしれません。ちなみに小説の中ではダイナガリバーがダービーを制しているので、1986年という設定のようですね。

イベントらしいことと言ったら、ぼくとアキラとよう子の三人で豊島園に行くのと、その三人と島田とゴンタで海に行くことくらい。あとはぼくの日常、通勤と帰宅する道で茶トラの猫を探してみたり、土日は石上さんと競馬に行って、会社に行ったと思ったら三谷さんと喫茶店で競馬の話をしたり。

とにかくそんな日々が季節の移り変わり、競馬の開催替わりと共に描かれている小説なのです。このちょっと脱力気味な感じが、クセになるというか、読んでて心地良くて、私は何度も読んでしまうのです。文庫の表紙も気に入っています。

プレーンソング (中公文庫)
保坂 和志
中央公論新社
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