すっかりハマってしまった横山秀夫作品。『陰の季節』に続けて『動機』も読みました。

この『動機』には表題作の他『逆転の夏』、『ネタ元』、『密室の人』など四篇が収録されています。

読む前はてっきり収録作品の全てが『陰の季節』、『第三の時効』のように連作形式の警察小説だと思っていたのですが、違っていました。

警察小説と言えるのは表題作の『動機』のみ。

U署で一括保管していた三十冊の警察手帳が紛失してしまう。警察手帳の紛失防止のため、手帳の一括保管を提案したのは、J県警本部警務課企画調査官の貝瀬警視だった。貝瀬のこの提案に対する刑事部の反発は凄まじかったが、貝瀬は一歩も引かず、警察手帳の一括保管はテスト導入中だった。貝瀬は、内部犯の可能性もあると主張し、記者発表を二日遅らせる。
内部の人間による犯行ならば、その「動機」は一体何なのか?貝瀬は一人、U署に乗り込み独自の調査を開始する・・・。

やはり横山秀夫の警察小説にハズレはありませんねー。貝瀬は自らが提案した警察手帳の一括保管を狙われてしまったことで、上層部をはじめ周囲の人間からは冷ややかな目で見られてしまいます。万一三十冊もの警察手帳を紛失したなどという記者発表をされてしまったら、貝瀬は警察組織の中では死んだも同然になってしまう。ただで死ぬわけにはいかないと必死に犯人探しをする貝瀬。
そんな貝瀬の父親もまた警察官だったのだが、定年退官し、妻を失ってからは心が壊れてしまい病院で入院生活を送っている。父の介護をしてくれていた妻の愛子に相談することなく貝瀬は父を病院に入れた。そのことで夫婦の間にわだかまりが出来てしまった・・・。
家庭内の悩みも抱えつつ、自身の警察官としての将来を賭けた貝瀬の二日間の孤独な捜査が描かれています。推理をめぐらせ、犯人を絞り込んでいく様子はとても緊張感溢れるものでした。最後のドンデン返しもよかった!とにかく終始ハラハラドキドキさせられましたが、最後はホッと温かい気持ちにさせられました。

他の収録作品で面白かったのは『逆転の夏』。殺人の前科のある男、山本は刑務所を出所した後、葬儀会社で遺体の搬送をする仕事をしている。山本の過去を知るのは社長の野崎だけだが、その野崎がいつ自分の過去を他の同僚に暴露してしまうかと思うと気が重かった。ある日、山本に知らない男から電話がかかってくる。男は山本の過去を知った上で殺人を依頼してきた。最初は悪い冗談だと思って相手にしなかった山本だが、「カサイショウジ」という名前で山本の銀行口座に金が振り込まれるようになって・・・というあらすじ。
カサイは誰なのか?なぜ山本に殺人を依頼するのか?などの謎ももちろん気になりましたが、ごくごく平凡な生活を送っていたはずの山本がほんのちょっとした出来心から、ついには人を殺してしまうことになってしまう、そのいきさつが、何だか誰の身にも起きそうなリアルさがあって、読んでいてちょっと怖くなりました。

他の2作品は地方新聞の女性記者が大手新聞から引き抜きの誘いを受ける『ネタ元』と殺人事件の審理中に裁判長が居眠りをしてしまい、しかも寝言で妻の名を呼んでしまう『密室の人』。

うーん。次はどの横山作品の文庫を買おうかな。横山秀夫の描く世界にハマッてしまうと、抜け出せなくなりそうですね。

動機 (文春文庫)
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横山 秀夫
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