村上春樹は長篇も好きだけど、短篇も好き。この『パン屋再襲撃』は初期の短篇集。

表題作『パン屋再襲撃』をはじめ、『象の消滅』、『ファミリー・アフェア』、『双子と沈んだ大陸』、『ローマ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラーのポーランド侵入・そして強風世界』、『ねじまき鳥と火曜日の女たち』の全六篇を収録。

私が好きなのは、表題作『パン屋再襲撃』。

僕と妻は六時に軽い夕食をとり、九時半に眠りについたのだが、なぜだか夜中の二時前に二人同時に目を覚ましてしまう。それから『オズの魔法使い』にでてくる竜巻のように圧倒的な空腹感が二人に襲いかかってくるのだが、食べる物はない。
そうこうするうち、僕はかつてこれと同じような経験をしたことを思い出し、思わず「パン屋襲撃」のことを口に出す。そして、昔僕と相棒がやったパン屋襲撃のことを妻に話す。すると、その話を聞いた妻が、今二人が感じているひどい空腹感は、パン屋襲撃の時に僕にかけられた呪いのせいだと言い、この呪いを解消するには、再度パン屋を襲撃するしかないと言い出す・・・というような変わった話。

パン屋を襲撃するために、僕と妻は深夜の東京の街に車で出掛けていくのですが、そんな時間に開いているパン屋などなく、妻が「ここにするわ」と決めたのは、マクドナルド(笑)。なんだが脱力系な話なのですが、ラストが妙に印象的で、この『パン屋再襲撃』はよく読み返す作品。これを読むと、マクドナルドのハンバーガーがめちゃめちゃ食べたくなるのですが、うちの近所にはマクドナルドがありません。ついでにモスもケンタッキーも、ミスタードーナツもありません…。

他に好きなのは最後に収録されている『ねじまき鳥と火曜日の女たち』なのですが、これって『ねじまき鳥クロニクル』の序章的作品なのですよね。私は村上春樹が好きで文庫化されている作品はほとんど読んでいるのですが、『ねじまき鳥クロニクル』と『海辺のカフカ』には未だに手が伸びません。なぜかと聞かれても、ハッキリとした理由はなく、あらすじや色々な方のレビューから得た感触でただ何となく読みたいと思わないのです。

『ねじまき鳥と火曜日の女たち』は、僕がスパゲティーをゆでているところに知らない女から電話がかかってきて、「十分間時間を欲しいの」と唐突に言われる。僕がスパゲティーをゆでていると言うと、またあとでかけ直すと言って電話が切れた。その後再び電話がかかってきたと思ったら、今度は妻からで、妻には猫を探してきて欲しいと言われる。妻に言われたとおり「路地」に猫を探しに行った僕は、十五、六くらいの女の子に出会う・・・という話。

ちなみにねじまき鳥というのは、ねじを巻くようなギイイイッという声でなく鳥で、どんな姿なのかも本当の名前も知らないが、妻がそう名づけた鳥。

もし、『ねじまき鳥クロニクル』が、この『ねじまき鳥と火曜日の女たち』の延長のような話、要するにちょっと不思議でほわーんとした話なら読んでみたい気はするのですけど、どうやらちょっと違うみたいなので読みたいという気持ちにならないのです。もし読むなら『海辺のカフカ』の方を先に読むような気がします。

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