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堀江敏幸 Archive
回送電車/堀江敏幸
![]() | 回送電車 (中公文庫 ほ 16-1) (2008/06) 堀江 敏幸 商品詳細を見る |
毎日少しずつ、少しずつ味わうように読んでいた堀江敏幸の『回送電車』ですが、読み終えてしまいました。
冒頭の『回送電車主義宣言』には、なぜ連載の通しタイトルを『回送電車』にしたのかが書かれています。
特急でも準急でも各駅でもない幻の電車。そんな回送電車の位置取りは、じつは私が漠然と夢見ている文学の理想としての、《居候》的な身分にほど近い。評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する散文の呼吸。複数のジャンルのなかを単独で生き抜くなどという傲慢な態度からははるかに遠く、それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ《居候》の本質であり、回送電車の特質なのだ。
また、堀江さんは自分がこれまで書いた本について、「書店という特定の路線上にあってなお分類不能な、まさしく回送電車的存在だったではないか」とおっしゃっています。
確かにその通りかも。堀江さんの本には、小説なのかエッセイなのかはっきりと区別できないものがあると私も感じたことがあります。その、あいまいさ加減が私は好きなのですが。
この『回送電車』も堀江さんらしい、静謐な雰囲気が漂う文章で、読んでいる間は日常の雑事などすっかり忘れて、静かな気持ちになることが出来ました。
でも、決して高尚な内容なのではなく、堀江さんが読んだ本のこと、気に入った文具や娘さんとの交流などささやかな日常について描かれているのですが、エッセイではなくまるで短編小説を読んでいるような気分になるのは、やはり堀江さんの『回送電車的』文章のせいなのでしょうか。
回送電車2、3も早く文庫化されないかなぁ〜(*´Д`)
- 2008-11-21
- 堀江敏幸
雪沼とその周辺/堀江敏幸
![]() | 雪沼とその周辺 (新潮文庫 ほ 16-2) (2007/07) 堀江 敏幸 商品詳細を見る |
堀江敏幸の小説の中では、以前感想を書いた『いつか王子駅で』とこの『雪沼とその周辺』が特にお気に入りの作品です。『雪沼とその周辺』は、堀江さんの小説の中でも、素直に読みやすい、小説らしい小説だと思います。
『雪沼とその周辺』は、山あいにある町、雪沼とその周辺で暮らす人々のそれぞれの人生の1ページを描いた連作小説です。
どれも素敵な作品ばかりですが、私が一番好きな、というか印象に残っているのは、やはり最初の『スタンス・ドット』です。
あと三十分で廃業というボウリング場に、たまたまお手洗いを借りるために入ってきた若い男女のカップル。この二人がその日最初の客であり、本当の意味で最後の客だった。そこで、店主は彼らに無料でゲームをしていかないかと勧める。青年がゲームを始め、店主は手書きでそのスコアをつけ始める。
青年のゲームを見守りながらも、店主の脳裏には、自分のこれまでの人生、亡くなった妻のことなどが、思い出されるのですが、その少し切なく、寂しげな店主と、明るく屈託の無い青年とその彼女との対比が何だかすごく印象的でした。
とても短い話なのですが、読み終えた後も、照明を落として少し暗くなっている、そのボウリング場「リトルベアーボウル」がしばらく私の頭の中に浮かんでいるような、余韻の残る作品でした。
もうひとつ『レンガを積む』という作品も、私は好きです。店をたたむことになった前の店主から引き継いだレコード店「蓮根音楽堂」を経営する蓮根さんのそれまでの人生を振り返った、これもまたとても短い話なのですが、何故だか心に残りました。蓮根さんの人生にとりわけ大きな出来事が起きる訳でもないのに。
『雪沼とその周辺』には、そんなじんわり心に沁みる短編が詰まっています。これで、文庫のこのお値段は、かなりお得ですね(笑)。手元に残しておきたい小説のひとつです。こういう本に出会うのは、もちろん嬉しいのですが、例え場所を取らない文庫本とはいえ、こうやって、どんどん本が増えるのが悩みの種だったりもします(;´∀`)
- 2008-09-14
- 堀江敏幸
いつか王子駅で/堀江敏幸
![]() | いつか王子駅で (新潮文庫) (2006/08) 堀江 敏幸 商品詳細を見る |
2004年にWEB本の雑誌の読書相談室でした質問に回答してもらえた事がきっかけとなり堀江敏幸の『いつか王子駅で』を読みました。今では堀江さんは好きな作家の一人になりましたし、あの時回答して下さった北上次郎さんには大感謝しています。
ちなみに私がした質問は「何かしら競馬に関する場面が出てくる面白い小説(エッセイ、ノンフィクションではなく)は何かありますでしょうか?」(全文だと長くなるので前後は省略。ちなみに質問の際のペンネームはヒシ☆ミラクル!です(笑)。)というもので、それに対する北上さんの回答に高村薫の『レディ・ジョーカー』と堀江敏幸の『いつか王子駅で』の2作品があったのです。特に『いつか王子駅で』の紹介に興味をそそられた私はすぐに読みたくなり急いで本を買いました。
文庫化された今では単行本と文庫本の2冊の『いつか王子駅で』が私の手元にあります。上↑の文庫の表紙デザイン、いいですよね。
実際には競馬に関する場面は一部分でしかないのですが、堀江敏幸の文章にかかるととても印象的な場面になってしまうのです。それにテンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスなどかつての名馬の名前が出てくるだけでついワクワクしてしまいます。私はリアルタイムで知っている訳ではないのだけれど、競馬好きならTTGの事は当然知っていますから。
かなりのハンデを背負ってなお稀代の先行馬に前をいかせないテンポイントの膂力と瞬発力、そして首を低く下げ、みずからが切り裂く風に雪を吹き飛ばしてスタンド前の直線を疾走するフォームは、どんなに意地悪な見方をしても完璧というほかなかった。
こういう短い一文だけでもテンポイントの姿が目に浮かぶようで思わずグッときてしまいます。
またラストシーンでは主人公が勉強を教えてあげている中学生の咲ちゃんが競技場で二百メートルを走る姿をテスコガビーに重ねるのですが、そのシーンも私には素敵で印象深いものです。
短い小説なので読むのにそんなに時間はかかりませんから、私は自分の好きなこれらのシーンをもう一度味わいたい為に度々読み返しています。
『いつか王子駅で』の明るいカラーではなく落ち着いたモノクロな雰囲気がすっかり気に入ってしまい堀江敏幸の他の作品も読むようになりました。
高村薫の『レディ・ジョーカー』は文庫化されたら読もうと思っていたのですが、なかなか文庫化されませんねぇ(;´Д`)
- 2008-08-01
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